接待ゴルフの成否は、スコアよりも「移動の車中」や「風呂上がり」の会話で決まる。先日のラウンドで、それを痛感する出来事があった。
相手は40代から60代の取引先。一昔前なら「男が鏡の前で長居するなんて」という時代だったが、今は違う。プレーを終え、浴室の洗面台に向かうと、そこにはサントリーの『VARON(ヴァロン)』の試供品が置かれていた。
60代の専務が、試供品を前に立ち止まった
隣で身支度をしていた60代の専務が、そのパウチを手に取ってじっと眺めている。「これ、最近よく広告で見るけど、どうなんだ?」と。
ただ、そのパウチは「ハガキで申し込む」という、少し世代を感じさせる導線がセットになったタイプ。専務は興味はあるものの、どこか手出ししにくそうな様子だった。
「これ、評判いいみたいですよ。良ければ申し込み、僕が今ここで手伝いましょうか?」
そう声をかけると、「おお、助かるよ。最近のものはよく分からんでな」と、専務の表情がふっと緩んだ。ハガキの書き方や、スマホで済ませる手順を教えるうちに、それまでのビジネスライクな空気が、まるで同好会の集まりのような親密なものに変わっていった。
「反町夫婦」から始まった、スキンケア談議
そこからは、驚くほど会話が弾んだ。私が愛用している『資生堂メン』の話を出すと、「やっぱり男も資生堂か」と盛り上がり、話題はあの反町隆史・松嶋菜々子夫妻のCMへ。
「あの反町さんが夫婦でケアしてるのを見ると、俺たちも無頓着じゃいられないよな」
そんな言葉が60代の専務から自然に出る。40代、50代の同席者たちも、「実は僕も……」と、それぞれが使っているブランドやケアの話をし始めた。
「意識の高さ」が新しいステータスになる時代
一昔前なら、高級外車や時計の話でマウントを取り合っていたのかもしれない。しかし今は、**「自分のコンディションをどう整えているか」**という意識の高さこそが、エグゼクティブとしてのステータスになりつつある。
肌が整っていることが、そのまま「自己管理ができている」という信頼に直結する。そんな共通認識が、あの場の空気を作っていた。
結局、その後の会食も終始和やかで、仕事の話も驚くほどスムーズに進んだ。
ゴルフの腕を磨くのも大事だが、相手が「今、密かに気になっているライフスタイル」の変化に気づけるかどうか。洗面台に置かれた一包の試供品が、どんな高度な営業トークよりも雄弁に、信頼の橋渡しをしてくれた一日だった。
